熱中症対策ガイドライン

この熱中症ガイドラインは、公益財団法人 日本サッカー協会にて、2016年3月10日に「熱中症ガイドラインとして」大会/試合スケジュールの規制を公布しています。 この熱中症ガイドラインと2016年6月16日に公布された「熱中症ガイドライン<Q&A>」を加筆し、読みやすくしています。

日本サッカー協会の2016年6月16日公布の「熱中症ガイドラインについて<FAQ> (16.06.16 改訂)」の文面を抑えると

Q. 本ガイドラインの対象はどこまで?
A. 日本国内で開催される全ての試合です。よって、全国大会だけでなく地域や都道府県、市町村単位の試合についてもガイドラインで規定されます。
Q. 練習時には適用されないのですか?
A. 本ガイドラインは試合のみに適用することとしますが、練習の際にも熱中症を防ぐために本ガイドラインに記載している対策を十分に講じて下さい。特に WBGT の過去値や予報値を把握する、定期的に日影に入ってカラダを冷やしスポーツドリンク等を飲むなどの行動が推奨されます。
Q. 本ガイドラインに違反した場合はどうなる?
A. 懲罰規定により懲罰の対象となります。しかし、それ以前の問題として選手等の命を守るための対策であることを十分に認識し、ガイドラインを遵守することが必要です。

 

暑さ指数とは


暑さ指数(WBGT(湿球黒球温度):Wet Bulb Globe Temperature)は、熱中症を予防することを目的として1954年にアメリカで提案された指標です。 単位は気温と同じ摂氏度(℃)で示されますが、その値は気温とは異なります。暑さ指数(WBGT)は人体と外気との熱のやりとり(熱収支)に着目した指標で、人体の熱収支に与える影響の大きい ①湿度、 ②日射・輻射(ふくしゃ)など周辺の熱環境、 ③気温の3つを取り入れた指標です。

 

日常生活に関する指針

温度基準
(WBGT)
注意すべき
生活活動の目安
注意事項
危険
(31℃以上)
すべての生活活動でおこる危険性 高齢者においては安静状態でも発生する危険性が大きい。
外出はなるべく避け、涼しい室内に移動する。
厳重警戒
(28~31℃※)
外出時は炎天下を避け、室内では室温の上昇に注意する。 運動や激しい作業をする際は定期的に充分に休息を取り入れる。
警戒
(25~28℃※)
中等度以上の生活活動でおこる危険性
注意
(25℃未満)
強い生活活動でおこる危険性 一般に危険性は少ないが激しい運動や重労働時には発生する危険性がある。

 

運動に関する指針

気温
(参考)
暑さ指数
(WBGT)
熱中症予防運動指針
35℃以上 31℃以上 運動は原則中止 WBGT31℃以上では、特別の場合以外は運動を中止する。
特に子どもの場合は中止すべき。
31~35℃ 28~31℃ 厳重警戒
(激しい運動は中止)
WBGT28℃以上では、熱中症の危険性が高いので、激しい運動や持久走など体温が上昇しやすい運動は避ける。
運動する場合には、頻繁に休息をとり水分・塩分の補給を行う。
体力の低い人、暑さになれていない人は運動中止。
28~31℃ 25~28℃ 警戒
(積極的に休息
WBGT25℃以上では、熱中症の危険が増すので、積極的に休息をとり適宜、水分・塩分を補給する。
激しい運動では、30分おきくらいに休息をとる。
24~28℃ 21~25℃ 注意
(積極的に水分補給)
WBGT21℃以上では、熱中症による死亡事故が発生する可能性がある。
熱中症の兆候に注意するとともに、運動の合間に積極的に水分・塩分を補給する。
24℃未満 21℃未満 ほぼ安全
(適宜水分補給)
WBGT21℃未満では、通常は熱中症の危険は小さいが、適宜水分・塩分の補給は必要である。
市民マラソンなどではこの条件でも熱中症が発生するので注意。

 

 

事前の準備


大会や試合前の基本的な考え

大会/試合を開催しようとする期間の各会場(都市)における、過去5年間の時間毎のWBGTの平均値を算出し、その数値によって大会/試合スケジュールを設定する。必要に応じて、試合時間を調整して早朝や夜間に試合を行う、ピッチ数を増やす、大会期間を長くするなどの対策を講じる。
原則として、7 月から 9 月に開催される大会は必須としますが、WBGT が高くなりそうな地域によっ てはその前後の期間の大会も対象とします。

WBGT値による大会/試合スケジュールの組み方

1.WBGTの設定温度

WBDTの平均値が次の各号の場合には熱中症対策を講じなければならない。

①WBGT=31℃以上となる時刻に、試合を始めない。(キックオフ時刻を設定しない。)

②WBGT=31℃以上となる時刻が試合時間に含まれる場合は、事前に「JFA 熱中症対策<A>」及び「JFA 熱中症対策<B>」の両方の対策を講じた上で、試合日の前日と翌日に試合を行わないスケジュールを組む。

③WBGT=28℃以上となる時刻が試合時間に含まれる場合は、事前に「JFA 熱中症対策<A>」を講じる。

2.体育館の場合

クーラーが無い体育館等の屋内で試合を行う場合も、上記と同じ基準で対策を講じる。

3.人工芝ピッチの場合

屋根の無い人工芝ピッチで試合を行う場合は、天然芝等に比べてWBGT値の上昇が見込まれるため、上記の値から-3℃した値を基準とする。
①WBGT=28℃以上となる時刻は、屋根の無い人工芝ピッチは原則として使用しないとする「JFA 熱中症対策<A>」及び「JFA 熱中症対策<B>」の両方の対策を講じなければならないため、屋根の無い人工芝ピッチでの試合を不可とする。

②WBGT=25℃以上となる時刻が試合時間に含まれる場合は事前に「JFA 熱中症対策<A>」を講じる。

③これらの規制・対策以外にも表面温度の上昇による足底部の低温やけどや擦過傷の危険性を考慮すること。

大会/試合スケジュールの組み方<Q&A>

①WBGTの平均値を算出する場合に大会や試合会場に該当する都市がない場合は、最も近い地点を参照すること。

②WBGTの平均値を算出する場合に過去値が2年分しかない場合は、2年分の平均値を算出すること。

③過去平均値の算出方法は、大会を開催する期間の全ての日の過去 5 年間の数値の平均を算出します。全ての日の平均とするのは、日によって対策を変えるのではなく、大会全般で共通の対策を講じるためです。それを時間別にし、大会期間を通じて何時にWBGTが何℃になるのか?を算出します。例えば、5日間の大会においては、時間毎に5年間×5日間=25個の数値の平均値をとります。

④過去の5年間のうちに極端に数値が高かったり低かったりする年がある場合でも、大会/試合を開催する上で、該当する会場と期間における WBGT の傾向を把握することが大きな目的なので、異常気象や雨天等の天候により極端に高低した数値も含めて平均値を算出することとしています。よって、さらに正確なWBGT平均値を求めるために5年間の除外平均(最大値と最小値を除いた平均値)を算出し、その数値によって対策を講じることも推奨されます。

 

前橋地域のWBGT5年間の平均値(2012年~2016年)

wbgt-2012-2016-maebashi

10:00 12:00 14:00 最高値
最初に25℃を超える 7/9 6/17 6/17 6/1
最初に28℃を超える 7/29 7/11 7/10 7/1
最初に31℃を超える なし なし なし 7/7
最高値 8/5 30.4℃ 8/5 30.4℃ 8/5 30.4℃ 8/9 32.5℃
31℃を完全に下回る なし なし なし 8/23
28℃を完全に下回る 8/23 8/23 8/23 9/21
25℃を完全に下回る 9/10 9/15 9/15

「JFA熱中症対策ガイドライン」に従い前橋市近隣で14:00に試合を行う場合には、WBGT平均値が31℃を超えることはないので試合を行うスケジュールを立てられる。  しかし、屋根の無い人工芝グラウンドは7/10~8/22(7/13、7/16~7/26を除く)まで試合のスケジュールを立てることができない。

大会/試合当日の実施時の規制


当日のWBGTの計測方法

1.各会場にWBGT計を準備し、計測した数値により対策を講じる。
原則として、各会場に必ず WBGT 計を用意して下さい。故障等のやむを得ない理由で用意ができなかった場合のみ、気温を目安として対応して下さい。夏季においては WBGT31℃=摂氏 35℃、WBGT28℃=摂氏 31℃が目安となります。

2.WBGTの計測は次の各号に定めた方法とする。

① 必ずピッチ上で、WBGT 計の黒球が日影にならないように計測する。計測時の WBGT計の高さは、プレーする選手の年齢の平均身長の 2/3 とする。
(例.中3男子の場合、168.8cm×2/3=113cm)

② 計測する時間はできる限り試合開始の直前、かつロッカーアウトするまでに両チームに対応方法を伝達できるタイミングとする。

③ 試合中もピッチに近い場所で計測し続け、数値を把握する。

④ ハーフタイム時(できる限り後半開始の直前)の数値により後半の対応方法を決定し、両チームに伝達する。

3.前後半のプレー中に数値が変わっても原則として、対応方法の変更はしない。

当日のWBGT値が基準値以上の場合の対応

1.WBGT値が31℃以上の場合は、試合を中止または延期する。
① やむを得ず行う場合は「JFA 熱中症対策<A>」及び「JFA 熱中症対策<B>」の両方を講じた上で、[Cooling Break]を行う。

② 中止や延期の判断は、試合前またはハーフタイム時に行うこととし、前後半のプレー中に試合を中止・延期はしない。試合前は大会の主催者または主管者、もしくはその代行者が必要に応じて主審と協議の上で判断し、ハーフタイム時は主審が大会の主催者または主管者、もしくはその代行者と協議の上で判断する。

③ 大会主催者は、中止や延期となった場合の対策や当該試合の取扱いについて予め規定しておくこと。

2.WBGT値が28℃以上の場合は、「JFA 熱中症対策<A>」を講じた上で、以下の対応を行う。

① 1・2 種…[Cooling Break] または[飲水タイム]を行う。
② 3・4 種…[Cooling Break]を行う。 また、「JFA 熱中症対策<A>」及び「JFA 熱中症対策<B>」の両方を講じた場合は、全ての種別において[Cooling Break] または[飲水タイム]を推奨することとする。

3.WBGT=25℃以上の場合は、3・4 種の試合は「JFA 熱中症対策<A>」を講じた上で、以下の対応を行う。

① 3 種…[飲水タイム]を行う。
② 4 種…[Cooling Break] または[飲水タイム]を行う。

4.体育館等の屋内でフットサル等の試合を行う場合も、上記と同じガイドラインを適用する。ただし、同じWBGT値でも屋外に比べて熱射・輻射が少ないが高湿度傾向にあるので、除湿機の設置や風通しを良くするなどの対策を講じる必要がある。また、建物自体に熱がこもるため日没後も WBGT 値が下がりにくい傾向があることにも注意すること。

5.フットサルやビーチサッカー、8人制サッカーのような「自由な交代」が可能な試合についても、ガイドラインに沿って[Cooling Break]や[飲水タイム]を設定する。

 

JFAが規定する熱中症対策


JFA熱中症対策<A>

① ベンチを含む十分なスペースにテント等を設置し、日射を遮る。
※全選手/スタッフが同時に入り、かつ氷や飲料等を置けるスペース。
※スタジアム等に備え付けの屋根が透明のベンチは、日射を遮れず風通しも悪いため使用不可。

② ベンチ内でスポーツドリンクが飲める環境を整える。
※天然芝等の上でも、養生やバケツの設置等の対策を講じてスタジアム管理者の了解を得る。

③ 各会場に WBGT 計を備える。

④ 審判員や運営スタッフ用、緊急対応用に、氷・スポーツドリンク・経口補水液を十分に準備する。

⑤ 観戦者のために、飲料を購入できる環境(売店や自販機)を整える。

⑥ 熱中症対応が可能な救急病院を準備する。特に夜間は宿直医による対応の可否を確認する。

⑦ [Cooling Break]または飲水タイムの準備をする。

 

JFA熱中症対策<B>

① 屋根の無い人工芝ピッチは原則として使用しない。

② 会場に医師、看護師、BLS(一次救命処置)資格保持者のいずれかを常駐させる。

③ クーラーがあるロッカールーム、医務室が設備された施設で試合を行う。

 

Cooling Breakの方法


1.前後半1回ずつ、それぞれの半分の時間が経過した頃に3分間の[Cooling Break]を設定し、選手と審判員は以下の行動をとる。

① 日影にあるベンチに入り、休む。

② 氷・アイスパック等でカラダ(頸部・脇下・鼠径部)を冷やし、必要に応じて着替えをする。

③ 水だけでなくスポーツドリンク等を飲む。
施設側の指示で、ベンチでスポーツドリンクが飲めない場合に、「熱中症対策<A>」を講じなければならない場合は、施設の管理者と協議して何とかして飲める環境を整えて下さい。例えば、テラプラス(天然芝保護ボード)を敷いた上にビニールシートや大型バケツを置くなどの対策をとって下さい。

2.Cooling Break留意点
①原則として試合の流れの中で両チームに有利・不利が生じないようなアウトオブプレーの時に主審が判断して設定する。

② 戦術的な指示も許容する。

③ チームが、カラダを冷やすための器具を持ち込む際は、事前に大会運営責任者の了解を得る。

④ 審判員は[Cooling Break]の時間を遵守するため、試合再開時には選手に速やかにポジションに戻るように促すと同時に、出場選手の確認を行う。

⑤ サブメンバーは出場メンバーとの識別のため必ずビブスを着用する。運営担当者は試合再開時に出場メンバーの確認について審判員をサポートする。

⑥ [Cooling Break]に要した時間は「その他の理由」によって費やされた時間として前後半それぞれの時間に追加される。

⑦ [Cooling Break]を設定する場合は試合前またはハーフタイム時のロッカーアウトまでに両チームに伝達する。また、WBGT 値に応じて、前半と後半の対応が異なる場合がある。

 

飲水タイムの方法


①前後半それぞれの半分の時間を経過した頃、試合の流れの中で両チームに有利、不利が生じないようなボールがアウトオブプレーの時に、主審が選手に指示を出して全員に飲水をさせる。もっとも良いのは中盤でのスローインの時であるが、負傷者のための担架を入れた時や、ゴールキックの時も可能である。

②選手はあらかじめラインの外に置かれているボトルをとるか、それぞれのチームベンチの前でベンチのチーム関係者から容器を受け取って、ライン上で飲水する。

③主審、副審もこの時に飲水して良い。そのために第4の審判員席と、第2副審用として反対側のタッチライン沿いにボトルを用意する必要がある。

④スポーツドリンク等、水以外の飲料の補給については、飲料がこぼれて、その含有物によっては競技場の施設を汚したり、芝生を傷めたりする恐れもある。大会主催者が水以外の持ち込み可否及び摂取可能エリアについて、使用会場に確認をとって運用を決定するので、その指示に従って、飲水する。

⑤飲水タイムは30秒から1分間程度とし、主審は選手にポジションにつくよう指示してなるべく早く試合を再開する。 飲水に要した時間は、「その他の理由」により空費された時間として、前、後半それぞれに時間を追加する。

⑥時間の経過にともなって環境条件がかなり変わった場合は、飲水を実施するかしないかの判断をハーフタイムに変更してよい。

⑦飲水を行う場合は、試合前(あるいはハーフタイム時)に両チームにその旨を知らせる。

⑧飲水タイムは、あくまでも飲水のためである。

⑨飲水タイムとは別に、従来どおり、ボールがアウトオブプレーのときにライン上で飲水できる。

 

解釈での追記事項


日本サッカー協会の2016年6月16日公布の「熱中症ガイドラインについて<FAQ> (16.06.16 改訂)」の文面を抑えると

Q. 本ガイドラインの対象はどこまで?
A. 日本国内で開催される全ての試合です。よって、全国大会だけでなく地域や都道府県、市町村単位の試合についてもガイドラインで規定されます。
Q. 練習時には適用されないのですか?
A. 本ガイドラインは試合のみに適用することとしますが、練習の際にも熱中症を防ぐために本ガイドラインに記載している対策を十分に講じて下さい。特に WBGT の過去値や予報値を把握する、定期的に日影に入ってカラダを冷やしスポーツドリンク等を飲むなどの行動が推奨されます。
Q. 本ガイドラインに違反した場合はどうなる?
A. 懲罰規定により懲罰の対象となります。しかし、それ以前の問題として選手等の命を守るための対策であることを十分に認識し、ガイドラインを遵守することが必要です。

罰則


日本サッカー協会の2016年6月16日公布の「熱中症ガイドラインについて<FAQ> (16.06.16 改訂)」の最終項で

Q. 本ガイドラインに違反した場合はどうなる?
A. 懲罰規定により懲罰の対象となります。しかし、それ以前の問題として選手等の命を守るための対策であることを十分に認識し、ガイドラインを遵守することが必要です。

 

 

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