子どもを守るために、JFA『熱中症対策ガイドライン』を理解しておこう!

この記事において重要なキーワードは、『屋根の無い人工芝ピッチ』、『過去5年間の時間毎のWBGT』、『WBGT=28℃』、『-3℃』、『事前準備』となりますので、このキーワードを気にしながらご覧ください。

暑さ指数(WBGT)って?

WBGTとは、湿球黒球温度のことで、Wet Bulb Globe Temperature の略です。気温とは異なり、一般的に「暑さ指数」と呼ばれ、熱中症予防の目安となる数値です。人体と外気との熱のやりとり(熱収支)に着目した指標で、人体の熱収支に与える影響の大きい①湿度、②日射・輻射(ふくしゃ)など周辺の熱環境、③気温の3つを取り入れた指標です。

熱中症になると

もし、Ⅲ度 熱射病(heat stroke)になったら

体温調節が破綻し、過度に体温が上昇(40℃以上)して脳機能に異常をきたした状態です。種々の程度の意識障害がみられ、応答が鈍い、言動がおかしいといった状態から進行するとこん睡状態になります。 高体温が持続すると脳だけでなく、肝臓、腎臓、肺、心臓などの多臓器障害を併発し、死亡率が高くなります。死の危険のある緊急事態であり、救命できるかどうかは、いかに早く体温を下げられるかにかかっています。救急車を要請し、速やかに冷却処置を開始します。

熱中症になるとの記事を読む→

熱中症にならないために

過去の記事をご覧ください→

熱中症対策ガイドライン

この『熱中症対策ガイドライン』では、『大会/試合スケジュールの規制(事前の準備)』で、大会や試合を企画する事前準備として、

大会/試合を開催しようとする期間の各会場(都市)における、過去5年間の時間毎のWBGTの平均値を算出し、その数値によって大会/試合スケジュールを設定する。必要に応じて、試合時間を調整して早朝や夜間に試合を行う、ピッチ数を増やす、大会期間を長くするなどの対策を講じる

と、規制しています。

この規制内容は?

■WBGT=31℃以上となる時刻に、試合を始めない。(キックオフ時刻を設定しない。)

■WBGT=31℃以上となる時刻が試合時間に含まれる場合は、事前に『JFA 熱中症対策※1<A>+<B>』を講じた上で、試合日の前日と翌日に試合を行わないスケジュールを組む。

■WBGT=28℃以上となる時刻が試合時間に含まれる場合は、事前に『JFA 熱中症対策※1<A>』を講じる。

▽クーラーが無い体育館等の屋内で試合を行う場合も、上記と同じ基準で対策を講じる。

屋根の無い人工芝ピッチで試合を行う場合は、天然芝等に比べて WBGT 値の上昇が見込まれるため、上記の値から-3℃した値を基準とする。

-WBGT=28℃以上となる時刻は、屋根の無い人工芝ピッチは原則として使用しないとする『JFA熱中症対策※1<A>+<B>』を講じなければならないため、使用不可とする。

-WBGT=25℃以上となる時刻が試合時間に含まれる場合は事前に『JFA 熱中症対策※1<A>』を講じる。
これらの規制・対策以外にも表面温度の上昇による足底部の低温やけどや擦過傷の危険性を考慮すること。

JFA熱中症対策

『JFA 熱中症対策※1』

<A>

①ベンチを含む十分なスペースにテント等を設置し、日射を遮る。
※全選手/スタッフが同時に入り、かつ氷や飲料等を置けるスペース。
※スタジアム等に備え付けの屋根が透明のベンチは、日射を遮れず風通しも悪いため使用不可。
②ベンチ内でスポーツドリンクが飲める環境を整える。
※天然芝等の上でも、養生やバケツの設置等の対策を講じてスタジアム管理者の了解を得る。
③各会場にWBGT計を備える。
④審判員や運営スタッフ用、緊急対応用に、氷・スポーツドリンク・経口補水液を十分に準備する。
⑤観戦者のために、飲料を購入できる環境(売店や自販機)を整える。
⑥熱中症対応が可能な救急病院を準備する。特に夜間は宿直医による対応の可否を確認する。
⑦ [Cooling Break※2]または飲水タイムの準備をする。

<B>

⑧ 屋根の無い人工芝ピッチは原則として使用しない。
⑨ 会場に医師、看護師、BLS(一次救命処置)資格保持者のいずれかを常駐させる。
⑩ クーラーがあるロッカールーム、医務室が設備された施設で試合を行う。

とあります。

JFA熱中症対策ガイドラインpdf

WBGTの過去5年の大会期間の平均は?

大会会期が2019年7月28日~7月31日の4日間で、前橋市での開催の場合、過去5年間のWBGTを時間別に平均を算出すると・・・

7:00=24.3℃
8:00=25.3℃
9:00=26.4℃
10:00=27.1℃
11:00=28.1℃
12:00=28.4℃
13:00=28.4℃
14:00=28.9℃
15:00=28.6℃
16:00=28.2℃
17:00=27.2℃
18:00=25.9℃
19:00=25.2℃
20:00=25.0℃
21:00=24.6℃

この資料のpdfファイル

規制されるのは?

WBGTが31℃を超える日は無い
しかし、WBGT=28℃以上となる時刻が試合時間に含まれる場合は、屋根の無い人工芝ピッチは使用不可と規制がされます。

~JFA熱中症ガイドラインより~

事前の準備

大会/試合スケジュールの規制(事前の準備)

大会を行う場合は事前の準備として、この大会期間の5年間の平均WBGTが28℃を超える時間があるため、屋根の無い人工芝ピッチでの試合は、11:00後から17:00前が試合時間に含まれないよう対策を講じる必要があります。

対策方法

①天然芝ピッチにする
②11時~16時が試合時間に含まれないようにする
③ピッチ数を増やす

また、人工芝ピッチでWBGT=28℃以上となる時刻が試合時間に含まれる場合は、試合日の前日と翌日に試合を行わないスケジュールを組む必要があるかもしれません

さらに、JFA熱中症対策<A>にある7項目を準備する必要がある

例えば、WBGT=25℃以上の場合は、『②ベンチ内でスポーツドリンクが飲める環境を整える。』は、天然芝ピッチでも人工芝ピッチでも対策を講じる必要があります。

本ガイドラインの対象はどこまで?

日本国内で開催される全ての試合です。よって、全国大会だけでなく地域や都道府県、市町村単位の試合についてもガイドラインで規定されます。

~熱中症ガイドライン<FAQ>より~

 本ガイドラインに違反した場合はどうなる?

懲罰規定により懲罰の対象となります。しかし、それ以前の問題として選手等の命を守るための対策であることを十分に認識し、ガイドラインを遵守することが必要です。

~熱中症ガイドライン<FAQ>より~

参考<FAQ>

熱中症ガイドラインについて<FAQ>

Q. 過去の数値を計算するのはいつ開催される大会ですか?

A. 原則として7月から9月に開催される大会は必須としますが、WBGT が高くなりそうな地域によってはその前後の期間の大会も対象としてください。

Q.過去平均値の算出方法は?

A.大会を開催する期間の全ての日の過去5年間の数値の平均を算出します。全ての日の平均とするのは、日によって対策を変えるのではなく、大会全般で共通の対策を講じるためです。それを時間別にし、大会期間を通じて何時に WBGT が何℃になるのか?を算出します。例えば、5日間の大会においては、時間毎に5年間×5日間=25個の数値の平均値をとる、ということになります。

Q.なぜ、28℃、31℃が基準になるのですか?

A.日本体育協会の運動指針によります。また熱中症計でも28℃以上が「厳重警戒」、31℃以上が「原則中止」と記載されています。特に31℃で皮膚温より外気温のほうが高くなることでカラダから熱を逃がすことができないという危険な状況になります。

Q.人工芝はなぜ規制されるのか?

A.人工芝の特性上、黒いゴムチップや人工のパイル(芝)によりWBGTが高くなる傾向にあり、天然芝に比べて 3℃以上上がるというデータがあるなど熱中症のリスクは高まります。また熱中症以外にも表面温度が 20℃以上上がるというデータがあり、足底部の低温やけどや擦過傷の危険性が高くなります。これらのことから規制されることとなります。また近年は温度上昇を抑制する人工芝も開発されるなど様々な種類があるので、使用する人工芝上でWBGTを計測することが必要です。

Q.「試合時間に含まれる」とは?

A.予定される試合時間(プレー時間)に該当する時刻が含まれる、という意味です。例えば、15:00キックオフの前後半45分(ハーフタイム15分)の試合であれば、予定される試合時間は15:00 から16:45となります。ガイドラインの具体的な適用例については、参考図を参照下さい。

Q.「試合日の前日及び翌日に試合を行わないこと」とは?

A. 過去平均値が31℃以上の時間にやむを得ず試合を行う際の措置で、試合日の前日と翌日を休養日として体調を整えることを目的としています。

Q.なぜスポーツドリンクを飲まなければならないのか?

A.塩分の摂取不足や水だけの過剰摂取による低ナトリウム症(血液中のナトリウム濃度の低下)を防ぐため、また腸管での水分補給を促進させるために塩分(ナトリウム)と糖分を含んだ水分としてスポーツドリンク等を飲むことが熱中症予防に効果的だとされています。

Q.施設側の指示で、ベンチでスポーツドリンクが飲めません。

A.『熱中症対策 A』を講じなければならない場合は、施設の管理者と協議して何とかして飲める環境を整えて下さい。例えば、テラプラス(天然芝保護ボード)を敷いた上にビニールシートや大型バケツを置くなどの対策をとって下さい。

JFA熱中症ガイドライン<FAQ>

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